個人営業のブティックにバイトに通い始めた頃は、最新のファッションに毎日触れられるという夢のような期待でいっぱいでした。店長さんからは「しっかり心をこめて接客したら、成長するんだから」と言われました。
ところが実際に始めてみると、良心の呵責を感じるようなことまでしないといけないと、分かりました。やって来るお客さんは、すぐそばのスーパーに行くついでに立ち寄る近所の団地のママさんやシニア世代の人。ちっょとお出かけ程度の気軽な服を探しにやって来ます。「いらっしゃいませ」から始まって、「ありがとうございました」まで、買ってくれなくても、ずっと、つかず離れずの距離を微妙に保ちながら、声をかけるタイミングを伺うのです。
どの服が、なぜお似合いなのか。心の中ではおおよそ似合わないと感じていても、売り込まないといけないわけですから。それも歯が浮くような敬語で。飽きもせずしつこく店内のあちこちを見て回るお客には、もうかけることばも出尽くして、買わないんなら早く帰ってと言いたいぐらい。いくらバイトでも、そんな気持ちはみじんも出さずに、いつも笑顔で慎み深く応対するというのは、本当に成長できました。